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フレッド・ロイマー グリューナー・ヴェルトリーナー ロイザーベルグ 2021

参考価格(税込): 4,950
メーカーURL: http://loimer.at/
<ロイザーベルグについて>
ロイザーベルグは、単一畑であり2004年まではリースリングしか造っていませんでしたが、2004年以降は、リースリング テラッセン、グリューナー・ヴェルトリーナー テラッセンができました。2013年からロイザーベルグのファーストビンテージとなります。


ロイザーベルグは10haあり、そのうちの6haがグリューナー・ヴェルトリーナーで4haがリースリングになります。ロイザーベルグは、カンプタールで一番標高が高く(380m)、北からの冷たい風だけでなく、ハンガリー方向、東からパノニア気候の影響を受けて暖かい風がやってきます。土壌は雲母のはいった粘板岩です。50%をステンレスタンクで、残りを2500Lの古樽を使ってワインを造っています。


ロイザーベルグはエアステラーゲ(単一畑)と付けてもいいのですが、こちらに植わっているブドウの樹齢がだいたい5~25年というところで、比較的若いブドウの木になっているため、あえてエアステラーゲをつけていないのです。




味わい:黄色がかった濃い麦わら色。熟したリンゴ 洋ナシ、ドライフルーツ、レモンバーベナ、白コショウなどの香り。 林檎、ドライパイナップル、洋梨などのニュアンスで、タイトで厚みのある果実味としっかりとした酸とミネラル。力強さと緊迫感のあるボディの中にエレガントさも。長期熟成も充分に見込めます。



畑情報:ロイザーベルグ単一畑 
土壌:雲母粘板岩
樹齢:10-50年





収穫・醸造:
2021年10月中旬手摘みで収穫。ホールクラスターにてプレス。大きな古樽にて、全ての澱と共に10カ月、残りの50%はステンレスタンク 6 カ月自然発酵。大きな古樽にて熟成した後、2022年8月ボトリング。

世界で大注目されるグリューナー・ヴェルトリーナーの魅力

グリューナー・ヴェルトリーナーは、日本ではまだまだなじみの浅いブドウ品種ではありますが、世界中では知っているとカッコイイ品種として通っています。オーストリアは、歴史的に自国で造ったワインを自国で消費する文化圏だったので、ワインが積極的に輸出されていませんでした。しかし、オーストリアワイン公社のウィリー・クリンガーというプロモーターがアメリカでプロモーションをしかけると、一躍NYでトレンド品種として認められるようになったのです。グリューナーはドイツでグリーンを意味するため、『グリーンワイン』として知られています。





<2002年の世界を震撼させた出来事> 2002年、オーストリアのグリューナー・ヴェルトリーナーとシャルドネがウィーンやシンガポール、東京などで行われる国際テイスティングシリーズで世界の頂点にたちました。上位4位までがオーストリア産。ラモネ、ラトゥール、テナール、ブルゴーニュのジャド、イタリアのガイア、カリフォルニアのモンダヴィ、オーストラリアのペンフォールドなど世界的に有名な生産者の競合ワインの中で、上位10位のうち7種類がオーストリアのグリューナー・ヴェルトリーナーとシャルドネでした。(フレッド・ロイマーの評価は7位)


オーストリアワインの最新評価は
1.オーストリアの優れた白ワインは、世界的にもトップクラスに属する
2.長熟可能な白ワインとなりうる
3.コストパフォーマンスにおいては前人未到の素晴らしさを誇る
4.個性豊かなテロワールから生まれた信頼のおける品質のワインである。



<究極の品種の3つのスタイル>
1.軽快なスタイル
11~12%という控え目なアルコール濃度においても、グリューナー・ヴェルトリーナーはみずみずしく風味豊かなワインに仕上がっています。価格も手頃。


2.古典的スタイル
アルコール濃度12~13%になってくると、ワインはよりボディがありテクスチャーを感じるようになります。いきいきとした酸もそこにはあり、長い余韻へと繋がります。


3.リザーヴ
ラベルに「リザーヴRESERVE」(ヴァッハウでは「スマラクトSMARAGD」)と書かれたワインは、世界の偉大な白ワインに混じって敢然とした頭角を現しています。



◆グリューナー・ヴェルトリーナー◆

原産地:オーストリア、ニーダーエスタライヒ、ブルゲンラント


起源:トラミナーとSt.ゲオルゲンの自然交配。第2の親品種はオーストリアのブルゲンラントのSt.ゲオルゲンで発見。このブドウ品種は、発見された場所にちなんで名づけられました。その理由は、遺伝子調査では、どのブドウ品種にも由来しなかったためです。グリューナー・ヴェルトリーナーは、ローター・ヴェルトリーナーやフリューローター・ヴェルトリーナーとの関連はありません。



栽培面積:グリューナー・ヴェルトリーナーはオーストリアで最も重要な土着品種。レンツ・モーザーのハイカルチャー方式とともに、1950年代に最も広まりました。今日、この品種はニーダーエスタライヒやブルゲンラント北部で特に栽培されています。原産地の典型的なDACワインとして、幾つかのワイン生産地で特別な位置づけがされています。1999-2009の間にグリューナー・ヴェルトリーナーの栽培面積は22%減少しましたが、オーストリア全体のブドウ畑ではまだまだ主要なブドウ品種となっております。



生育条件:樹勢が強いため、収量コントロールを要します。また、レス土壌で特によく育ち、乾燥を嫌います。開花期はデリケートで、ベト病、ローター・ブレンナー病、クロローシスに罹りやすい。


グリューナー・ヴェルトリーナーは、様々なクオリティレベルのワインを造ることのできる、多様性に富んだブドウ品種です。軽やかで酸がしっかりしているワインから熟度の高いプレディカーツワインまで造ることができます。グリューナー・ヴェルトリーナーの多くの異なるスタイルには、個々の造り手の哲学も反映されています。ワインのスタイルに影響を与える要素として、収穫時期、場所、微気候、土壌などがあります。砂利や礫岩を多く含む土壌からは新鮮でレモンのようにイキイキとしたワインが、厚い黄土の層からは驚くほどバランスのよいシルクのような舌触りのワインが生まれます。また、オーストリア特有のプライマリーロックの土壌は、その上に育つ葡萄樹に強いミネラル風味を与えます。

オーストリアワインの銘醸地、カンプタール

フレッド・ロイマー醸造所があるオーストリーのカンプタールは、オーストリアのニーダーエスタライヒ州にあり、ウィーンから車で北西に1時間走ったところにあります。パノニアからの熱風の影響で夏は35度以上になりますが、カンプ川に沿って北から冷気も来るので、同時にとても寒くなる、寒暖差の大きなエリアです。全体的に風通しがよく、病害やボトリティスの影響が小さく、そのため、ワインはフレッシュでクリアな風味になりやすいのが特徴です。



カンプタールのいいワインというのは、山側斜面にできます。また、カンプタールは畑をはじめ、全てが小さな単位です。ブドウ畑がずっと続いているのではなく、畑の周りに藪や森、林など色々な自然があって、その自然環境が非常に多様であることが特徴です。



リースリングとグリューナー・ヴェルトリーナーがこの地方の主要品種で、エチケットに「カンプタール」とだけ書かれている場合は、このどちらかの品種でしかも、それは辛口を意味します。この地方の土壌は、レスという『黄土』に多く覆われ、たった数百年の若さでしかありません。(つまり、他の地域の土壌はそれよりももっと古い!)母岩は、基本的にプライマリーロック、特にグナイスであり、ハイリゲンシュタインだけは特別に、ペルム紀の砂岩主体のコングロマリットになっています。斜面下部などでは、レスや砂利、ロームの影響もでてきます。


オーストリアは、全世界のワイン生産量の1%を生産し、70%は国内、30%は海外へ輸出されています。お店であまり見られないのは、海外へまわるものが少ないからともいえそうです。栽培面積にしても、ボルドーが10万ヘクタールあるのに対し、オーストリアは4万ヘクタール。規模が小さいため、ワインを大量に生産するというのではなく、クオリティの高いものを造る醸造家が多い国です。




●ニーダーエスタライヒ州●
ニーダーエスタライヒ州(低地オーストリア)は、オーストリア最大の高品質ワイン生産地です。豊富な地場品種の生誕地であり、また数多くの国際品種のゆりかごでもあります。ニーダーエスタライヒ州には西のヴァッハウから東のカンヌントゥムに至る、8つの限定的ワイン生産地域があり、気候の違いによって、3つの区域に分けることができます。北部のヴァインフィアテル、ウィーンの西側のドナウ川沿いとその近隣の渓谷、そしてニーダーエスタライヒ州南東部分のパノニア平原です。





●カンプタール●
歴史があってなお活動的な、グリューナーとリースリングの産地であるカンプタールの名称は、カンプ川に由来しています。オーストリア最大のワイン生産村であるランゲンロイスを擁し、4000ヘクタールのブドウ畑が存在する、オーストリア最大のワイン生産地域です。ここでは文化活動と観光が特に重要な位置を占めています。カンプタールのワイン愛好家とワイン生産者が心から大切にしている存在、それはグリューナー・ヴェルトリーナーとリースリングです。2008年に発効したカンプタールDACは、ミディアム・ボディのクラシックなスタイルと、濃厚で豊満な辛口であるレゼルヴァ(リザーブ)・スタイルという二つのスタイルのグリューナー・ヴェルトリーナーとリースリングのワインが規定されています。





●気候●
産地全体がパノニア平原に向けて開かれているために夏は暑く、またマンハーツベルクの山々とヴァルトフィアテルが冷たい北風から産地全体を守る一方で、夜間には冷気を流すという働きをしているため、生育期間が周辺より長くなり、高い酸を維持したままゆっくりときれいな果実身を育むことができます。こうした生育環境が品種を問わずカンプタール特有の彩度の高い、生き生きとした味わいにつながっています。




●土壌●
地質学的には、片麻岩と結晶性スレートのベッドロックをロームが覆う土壌を基本に、小石土壌やレス土壌が入り混じります。その結果、斜面上方の原成岩土壌部分にリースリングが、下方のレスとロームの堆積した土壌にグリューナーが、そして温かめの深い土壌にはブルゴーニュ系品種が、またゴベルスブルク南方に多い小石土壌にはメルロが植えられています。一般的に産地の北半分はベーシックなワインを産み、南半分に銘醸畑が集中します。中でもハイリゲンシュタインとその東に並ぶガイスベアクはカンプタールを代表するリースリングの銘醸畑として知られています。ハイリゲンシュタインはとても暑く、周囲とは異なる地中海並みの温暖な局地的気候を形成しています。また、ふたつの丘の下方斜面のラムやレナー畑は、原成岩をロームが覆う‘品格を備えたグリューナー’造りに必須の土壌構成となっています。



●ロイマーの持つ4つの銘醸地●
ロイマーは4つの単一畑、グリューナー・ヴェルトリーナーを栽培しているシュピーゲル、ケーファーベルグ、リースリングを栽培しているシュタインマッスル、ゼーベルグがあります。カンプタールは、段々畑が多く、段々畑の斜面がどこの方角に向いているかにより、ブドウに影響を与えています。



【 シュピーゲル 】
シュピーゲルという土地は標高250mのところにあり土壌が非常にユニークな100%レス土。そして真南を向いています。グリューナー・ヴェルトリーナーとレス土の相性は最高です。ここに育つブドウは40年以上の古木で地層の深いところまでしっかりと根を下ろしています。そして、この土地はブドウにダメージを与えない程度ですが、乾燥が激しいところでもあります。厳しい環境がブドウに与えたものは、成分をぎゅっと押し込めたような濃縮したフレーバーと複雑さ。一口含めば、口の中にはとても素晴らしい世界が広がります。この味わいをより楽しむために、カラフェに開ける、あるいは、グラスに注いでもすぐには飲まず、しばらく待ち、よく空気に触れさせてください。そうすることで、このワインが潜在的に持っているアロマが開き、その香りはフィニッシュまで楽しめます。また、ワインはとてもクリーミーでエキス成分をしっかりと感じます。
 


【 ケーファーベルグ 】
ケーファーベルグは標高300-350mにある3haの単一畑で、東向きに面しています。異なる基盤から成る石灰質の土壌です。角閃岩、片麻岩、雲母片岩のような石や、もっと若いクレイ、砂、砂利などが堆積しています。これらの石に関しては、温度を変化させると考えられています。ケーファーベルグは、より涼しいミクロクリマがあり、加えてこの地域には異なる海底がありました。これらの気候が、グリューナー・ヴェルトリーナーが生理学的熟成に到達するまでその収穫をできるだけ遅らせることを可能にしています。その結果、ミネラルをたくさん含み、フィネスやエレガントさを持つワインができあがります。



【 シュタインマッスル 】
シュタインマッスルは、単一畑で、標高はおおよそ350m。南南東に面しているため、畑は北からの冷たい風から守られます。ここの土壌は、原成岩や風化した雲母。土壌の上部はクレイや石で、それらは異なる作用をしています。褐色土壌がだいたい50cmの厚みで広がり重く栄養が豊富。平均を上回る量の石があり、そのことがブドウ畑のオペレーションを難しくしている。しかし、この石がもたらす大きなアドバンテージがあり、それは石が熱を吸収し、日没後に長時間かけてそれを放射することです。



【 ゼーベルグ 】
ゼーベルグは、南向きで標高は平均300m。北に位置するヴァルトフィアテルの冷気の影響を受け、暑い日と涼しい夜がブドウに魅力を与えます。ブドウはゆっくりと成熟し、そのためワインはとてもフルーティーな印象があります。砂とローム、粘板岩がワインに素晴らしい果実味と濃厚でいて骨格があり、スパイシーな味わいをつくりだします。リースリングのキャラクターをとりわけ発揮できる場所です。栽培されているブドウ樹は、古いもので樹齢65年。

Fred Loimer~強さの中に温かさを秘める人~

●歴史●
フレッド・ロイマーはワイン生産者の家族の下に生まれました。彼の父が1962年に祖父からファミリーの農場を引き継ぎ、その頃はまだ、鶏や牛、野菜などを作る傍ら、ワイン造りをしていました。しかし、徐々にワイン生産だけに集中していくようになります。栽培方法は、当時急速に普及したレンツ・モーザーのハイカルチャーを採用。隣の畝が日陰にならないように畝の間隔を3mと広くとり、樹間も1~1.2mと距離を置き、植樹密度は1haあたり約3000本。葡萄樹の幹を1.2~1.4mと高く仕立て、地面からの湿気から房を話しつつ、腰をまげなくても剪定・収穫作業ができるように工夫されていました。また、当時のワイン造りは品質よりも収量を重視していました。



ロイマーは、1983年にクロスターノイブルクの醸造学校を卒業してから、1985年にドイツのナーエで、1986年にカリフォルニアのシュッグ・ワイナリーで研修を終え、1987年に父親のワイナリーで働きはじめます。最初の10年間はまず、セラーワークを身につけることから始めました。その後、ブドウ畑の管理をし、最終的に自分のアイディアをワイン造りに反映しはじめます。この間に、収量重視のワイン造りをする父と、品質重視のワイン造りをするロイマーは度々ぶつかるようになります。



1997年、ロイマーがようやくワイナリーを引き継ぎ、今までのファミリーのワイン生産のフィロソフィーを変化させます。それまでは、凝縮感があり、アルコール度が高めのワインが主流でしたが、1998年ボトリティスが大量に発生したことをきっかけに、ロイマーは、状態のよい果実のみを選果し、収穫を早める昔ながらのワイン造り、それは、アルコールが低く、フレッシュさがあり、フルーティーでミネラルがあるワイン造りに切り替えたのです。このスタイルのワインを造るためには、クリーンな果実が必要になります。ロイマーと彼の父が37エーカーから始めた畑は、いまでは148エーカーまで増えています。



2005年にはテレメンレギオンのグンポルツキルヒェンにあるシェルマン醸造所のオーナーになります。2002年から共同でワインを醸造するなど親交のあったゴットフリート・シェルマンが逝去した際、同醸造所が所有する6haと周辺のブドウ畑8haを賃貸し、経営と栽培・醸造を引き受けました。




●フィロソフィー●
「犠牲なき持続可能性」、これこそが、フレッド・ロイマーのフィロソフィーです。ワインは楽しみであるからこそ、それを造る人間は、生きることを心から楽しみ、そして多くのことに関心をもって熱心に学ばなければならないといいます。何事にも妥協を許さず、常にハングリー精神を持って取り組む、ロイマーがクオリティマニアと呼ばれる所以がここにあります。




●理想のワイン●
フレッド・ロイマーの目指しているワインは、ワインの糖度やエキスの濃縮だけを重視するのではなく、ブドウの生理学的成熟を重視し、ブドウ本来のアロマに満ち、テロワールの特徴を最大限に引き出したスタイリッシュなワインです。そして、ブドウの育つ環境の理想は、昔ながらのブドウ栽培の風景を再現すること。昔の人たちは、ブドウを栽培するだけでなく、その隣で家畜を飼い、野菜など様々な植物も育てていた。そして、科学の発達した現代、効率ばかりが求められますが、ロイマーは、あえて昔のやり方にすることで、ブドウの可能性を最大限に引き出そうとしているのです。




●フレッド・ロイマーの素顔●
幾つかの雑誌や本で見かけるロイマーから受けたイメージは硬質。しかし、実際に会ってみると自分のことを『僕はファーマーだから』といってしまえるほど、気さくな人物でした。畑に出る事やワインを造ること、家族の存在、一緒に働いているスタッフを心から大切にしているロイマー。強さの中に太陽のような温かみを感じる人柄。そんな彼は、畑やセラーに関係していないスタッフまでビオディナミ農法の教育を受けさせるという一面ももっています。それは、出稼ぎで他の国から畑の作業に来ている人に対しても行っています。『彼らが母国に帰ったときに、ビオディナミ農法をやって欲しいと思っているつもりはないけれど、作業をしている人が、自分達のやっていることの重要性に気づいて、自分のやっていることを大切に思うこと、それが結果的にいいブドウを造り、いいワインになる、そして僕自身も得をするからね!』なんて笑いながら話してくれました。



そんなロイマーにも、過去に何度も苦しい時代がありました。醸造学校を卒業した83年、その後は、霜や雹でブドウがなかなかできなかった時代が続き、そして85年のワインスキャンダル。6年間で2回しかブドウが収穫できない年もあり、そんなときには、ワイン造りを続けていてもいいものかを悩んでいたといいます。でも、結局自分はファーマーで、ワインを造る以外にできることはない、だからワインを造ると決め、今のロイマーがあるのです。笑顔の向こう側に、今日も明日も明後日も、この先ずっと畑に出てブドウの手入れをしているロイマーの姿が想像できました。

Respekt~哲学を掲げて~

『農業に携わる者は、農夫である前に、一人の哲学者であれ』


生産者の態度や人間性が、ワインの品質を探究するという生産行為と同じくらい大切なものであるとリスペクトは考えています。リスペクトの理想は、『自然と人の両方を敬う(リスペクトする)こと』です。最高品質を達成することは、この尊敬を持って行動したことの延長線上にあります。しかし、人の内面は、試験することも、何かでコントロールすることもできません。だからこそ、常に何を思うのかが大切であり、自然や人々を敬う気持ちを持つことを忘れないことが大切であると考えています。




●団体としてのリスペクト●
2007年にフレッド・ロイマーが設立。現在オーストリアを始め、ハンガリーやアルト・アディジェなど15のワイナリーがリスペクトメンバーとして活動しています。リスペクトは、みんなが一丸となってより多くのことを達成できる場所。お互いに学び合うため、お互いに教育し合うため、そしてサポートしあうための団体です。Respektは、ルドルフ・シュタイナーの考え方を基にしながら、それと同時に理論や実践では独立的で効果的に活動しています。加えてオープンでフレンドリー、そして専門的なことがやりとりできるような、志を同じくする人を探しています。



同じような認証団体にデメターがありますが、デメターは全ての農産物を認証する一方で、リスペクトはワインのみの認証団体ということになります。



●リスペクトの基準●
農業講座;ブレスラウ近郊のコーベルヴィッツ(現在のポーランド)、1924年、ルドルフ・シュタイナー博士-農業の原則


ビオディナミ農法は、農業や機械など何もなく、自然とともに自然な方法で働くしかなかった時代の農業であるともいえます。



●『生物多様性』の追求●
現在世界では、わずかな種類の作物しか栽培されない単一化が進んでいます。これは、需要の高い農作物を集中的に生産させたことがはじまりで、この農法は効率性や利益性があり、一度に多くの作物を生産することはできますが、単一の品種だけを育てていると一方で、そこに栽培されている植物が必要とするミネラルや栄養素が皆同じであり、次第に土壌のバランスが崩れ、外部から何か(薬品など)を持ち込まないと最終的には作物が作れないような状態になります。私たちは、このやり方には限界があり、いつか破綻すると思うのです。幸い、カンプタールのように畑が小規模な場合は、周りに藪や森、林があって、そこに植物や動物が生息し、多様性をもたらします。畑にはグリーンカバーをして、様々な花を咲かせ、蜂や蝶やそして動物を持ち込むようにしているのです。多様な生き物が生息するところに生まれる多様な刺激こそが、生態系のバランスにとって重要であると考えます。そして、バランスが取れるということは、抵抗力が高まることにも繋がっているのです。ブドウ栽培も、モノカルチャー(単一栽培)であり、それをどのようにケアしていくのか、ということを常に考えています。まず、免疫を高め、そのために必要なプレパレーションを撒いたり、予防や畑で実際に起こっている問題に対して直接働きかけるような調剤を散布したりします。また、殺虫剤の代わりにフェロモンを使ったり、菌類がもたらす病気に対しては、硫黄や銅を、その他のケア用品としてベーキングパウダーや海藻エキス、オレンジ油、フェンネル油なども使っています。



●理想の土を求めて●
全ての基本というのは、土にあります。健康な土、これは腐葉土(植物や動物の有機物が分解されて出来たもので、養分に富み、水分保持性に優れている)ともいいますが、これは土のバランスを取ると同時に、土に栄養を与える働きを持っています。つまり、土そのものを栄養バランスのよい土にすることで、『肥料』というものを使わずにいられるのです。私たちは、家畜農家と契約して、ヤギやヒツジ、ウマやウシなどの糞を全部もらってきてその代わりに畑の草を食べてもらっています。畑に花を咲かせたり、グリーンカバーをすること、それから土にコンポスト(ノコギリソウ、カモミール、ネトル、オーク樹皮、タンポポ、バレリアン)を与えることで、非常にいきいきとした土ができるのです。



●『情報』という役割を持つプレパレーション(調合剤)●
‘プレパレーション’という考え方はシュタイナーの人智学から来ていますが、これは、自然というものが地球や宇宙全体のバランスからできていて、プレパレーションというものは、それぞれのバランスを取り、その間を取り持つ役割をもちます。自然や宇宙、植物や動物そして、人は一つの目に見えない繋がりの中に存在しているのですが、ここで問題となってくるのは、その繋がりを断ち切ってしまうようなことが実際に起こっているということなのです。例えば、動物がどんどん増えることで、糞やその他のものがバランスの中で消費されないということなど。そうなると、そこからまた新たな問題が発生し、その問題を解決するための別の何かが必要になるのです。


畑には2種類のプレパレーションを散布しています。1つは土に栄養を与え、成長を促すためのもの(500番)、もう1つは光の反射効果を最大限に活用することで、果実の構成要素を濃縮させ、成熟させるもの(501番)です。
土に働くプレパレーションは、雌牛の角に牛糞を詰め、それをひと冬寝かした後散布するのですが、糞を取りだしてそのまま撒くのではなく、糞を水でかき混ぜて撒くのです。
『水でかき混ぜる』ことをディナミゼーション(=dynamization)、つまり、ダイナミック(=dynamic)というのですが、ビオディナミの語源はここから来ているのです。水の中でかき混ぜる理由は、エネルギーを水と結合させるため。このエネルギーと共に動物の情報が土へと届きます。それは、いつも草が生え始める前に行って、情報をコントロールしています。




●手を使うことの意味●
畑の中では、葉をどのようにつけるのか、剪定、収穫など非常に手作業が多く、特にリスペクトでは、機械収穫を禁止しています。オーストリアに限っていえば多くのワイナリーが手収穫にこだわっています。


剪定の作業にしても、手で行っています。というのも、剪定はブドウにとって年に一度のとてもハードな処置なのです。それをより優しく行いたいという理由で、‘gentle vine pruining'方法をとっています。これは、なるべく古いものには手をつけないで、1年2年の枝だけに手をいれるやり方なのですが、普通のワイヤーに添わせるような剪定方法の場合、どうしても古い枝を何度も何度も切って行くことになるのです。でも、ブドウは、普通の果実の木と違って、一旦切ると切った傷を治す力がない。ですから、なるべく古い木に傷をつけないやり方をしています。




●セラーワーク●
よいワインはよいブドウから造られるため、よいブドウを造る畑は重要です。しかし、畑でのブドウ造りと同じやり方で醸造することもまた、大切なことなのです。醸造するときに、酵母は畑にあるものをそのまま使い、畑のテロワールをそのままワインに伝えるようにしているのですが、これは、培養酵母を加えることが悪いと言っているのではないのです。自発的に発酵させた酵母は、様々な種類の酵母が途中で関わりを持ち、そのことが最終的に大きな差を生むのです。そして、畑ではいつも作業に追われているのですが、セラーはいつもワインをよくするのを助けてくれるのです。もちろん、自発的に発酵させるとワイルドな香りも出るし、発酵の状態が還元的になりますが、還元的になったものは、木の樽などを使って空気を通してゆっくりと元の状態に戻せばいいのです。ボトリングまで時間がかかるのは、こういった理由によるのです。

ワイン造りと向き合う~リスペクトrespekt に至るまでの経緯~

<フレッド・ロイマーにとってのビオディナミ農法>
ロイマーにとって、ビオディナミ農法はワインの質をどうやったら向上できるかという、最初から取り組んできたテーマの延長戦上にあります。2002年か2003年頃ビオディナミ農法が視野に入ってきます。当時、グラーフ・ハーデック醸造所の経営責任者だったペーター・マルベルクと一緒にビオディナミ農法について勉強を始めたのです。2005年、ビオディナミ農法に取り組み、コンサルタントもしているアンドリュー・ロランドと出会います。ちょうどその年、リュット・レゾネで少量とはいえ農薬を使用していたにもかかわらず、べと病が蔓延したことも、ビオディナミ農法を導入する契機になりました。2006年に全面的にビオディナミ農法に切り替えた後、2007年にはビオディナミ農法醸造家団体「リスペクト」を結成します。


効果はすぐに目に見えて現れ、畝の間が下草で覆われ、さまざまな花が咲き、生命に満ちたブドウ畑になっていきました。2年目には葡萄樹は従来よりゆっくりと成長するようになるとともに病害虫に悩まされ、3年目の2008年はべと病が蔓延しました。しかし、それを乗り越えてからは葡萄樹は強くなり、順調に生育するようになりました。


<リスペクトと他の団体との違い>
ロイマー醸造所は、2009年にヨーロッパ共同体(EU)の定めた規定に基づく公的なビオロジック認証をEU公認認証機関である「LACON」や「ABCERT」の審査を受けて取得するとともに、自ら立ち上げた「リスペクト」のビオディナミ農法認証を受けました。国際認証団体「デメター」からも加盟を促されたものの、従わず、リスペクトもデメターも法的には同等の立場であると考えています。



葡萄栽培とワイン醸造に特化した団体として、リスペクトはシュタイナーの教えを尊重しつつも、現代的な視点から必要と思われるものを採用すべきだと考えています。例えば、デメターは、培養酵母の使用を禁じていいますがリスペクトでは必要な場合は使用を認めているのです。ビオディナミ農法の認証団体はそれぞれに認証規定があり、団体によって異なるビオディナミ農法の基準が存在しています。




ビオディナミ農法の効果


●ガイゼンハイムでの実験●
ガイゼンハイムという有名な醸造学校でビオディナミ農法の効果を調べる実験を行いました。まず、1つの畑を3つに分けて在来農法、オーガニック農法、ビオディナミ農法を行います。オーガニック農法とビオディナミ農法の違いは、プレパレーションがあるかないかだけ。実際に目にした育ち方の違いは、在来農法ではとにかく生長が強く、葉はより緑色が濃くなり、その生長は秋になっても止まらずに続きます。オーガニック農法は、それよりももう少し生長が抑えられ、ビオディナミ農法になると、更に抑えられる。そして、高さももちろん低いのですが、木の重量を量ると重いのです。このことは、一つ一つの細胞が小さいということを意味しています。そして、一つ一つの細胞が小さいほど免疫力が高まるのです。また、ビオディナミ農法では、様々な生物が生息するため、バランスがよく、プレパレーションも必要以上に撒くことはなく、健康な果実を得ることができるのです。




●感情への問いかけ●
ビオディナミ農法に変えて、自分の畑と人の畑の違いがよくわかります。しかし、一番違っているのは、畑の見た目というよりも、ディナミゼーションしたものを撒く自分自身なのです。自分が繋がっているという感覚、これは、今までと心理的に全く違のです。プレパレーションはもしかしたら、ブドウに直接働きかけているわけではないのかもしれないけれど、自分にとっては、全く違う感情を与えてくれるので、最終的なワインの仕上がりも全く違うものになると確信しています。



●糖度と生理学的成熟の関係●
ブドウの生長を簡単に説明すると、芽が出て、開花や結実します。その後、ヴェレゾンといって果実が色づき成熟が始まります。この成熟はその後、二つに分かれるのですが、一つは糖分の成熟(糖度が上がり、酸度が下がる)、もう一つは生理的な成熟(色、風味、タンニンの発達)です。生長したブドウは、この二つに分かれた成熟の前で一旦生長をストップさせるのです。ストップした後、ブドウは成熟という段階に入ってくのですが、実は3つの農法ではこの成熟に与える影響が違うのです。ビオディナミ農法の場合、生長の時期が短く、糖度と生理学的成熟がゆっくり行われ、いつもそのバランスが取れています。一方、在来農法では、生長の時期が長く、いつまでも葉は青いまま生長を続けて、ようやく成熟の段階がやってきます。成熟の期間が短いため、糖度の成熟と生理学的成熟にアンバランスが生じます。良いワインを造るには、良いブドウ作りから。畑では、ブドウの生理学的成熟が低い糖度で達成させるようにすることで、より深みやストラクチャー、熟成能力のあるワインになります。

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